【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
それから放心状態の私を前に、ユズリハは顔を部屋の奥の方に向けた。
「東郷」
「はい」
「後は頼んだ」
そう言ってユズリハは部屋を出て行った。
残された私の元に東郷さんがやって来て、私の肩を掴んで立たせる。
「さ、行くぞ」
「行くって、どこに……」
「当たり前だろ、風呂だ。準備しねぇと」
「え……」
「あんたはあいつの夜の相手だろ。性 処理の道具になるんだ。それくらいわかってるだろ」
がつんと現実を突きつけられ、喉が詰まってなにも言えなくなる。
身体と心が一気に冷えていく。
男性と付き合ったことはないし、そういう経験も知識もないけれど、東郷さんの言葉の意味は理解することができた。
ああ、そうだった……。
ユズリハの言うとおり、私は搾取される側の人間だった。
私が夜の相手になる代わりに、うちの借金は肩代わりしてもらえたんだ。
それならば、私はちゃんとその見返りに応えなきゃいけない。
それにお父さんも言っていたじゃない。
これが親孝行なんだって。
生まれてきた意味なんてずっとないと思ってたけど、ようやくだれかの役に立てるんだ。
だからこれは喜ばしいことなんだよ、莉羽。
自分にそう言い聞かせるけど、目の奥を刺激する熱だけは、私を見逃してはくれなかった。