【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
そしてドアノブを握りぎいっと前に押し出すと、広い部屋の中、キングサイズのベッドに足を組んで座っていたユズリハがこちらを振り返った。
「ずいぶん遅かったな。のぼせてたかと思ったわ」
そう笑うユズリハの顔には、さっきとは打って変わってどこか柔らかさを孕み、少しだけ肩の力が抜けた。
だから鉄仮面を顔の前に下ろし、私は動揺を隠しこむことができた。
「遅くなってすいません」
「ほら、隣おいで」
ぽんぽんとベッドを叩いて、隣に座るよう促すユズリハ。
私は無表情のまま頷き、ユズリハの隣に腰を下ろした。
「で? 俺のもんになる決心ついた?」
私の顔を覗き込み、低く蠱惑的な声で囁くユズリハ。
この身体は貴方に差し出すことを決心した。
けれど――。
「それでも、心だけは貴方のものにはなりません」
すると、ユズリハの瞳に妖しい光が宿る。
「へえ……。じゃあ身体に聞いてみるか」
「え?」