【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


すると、頬に両手があてがわれ、歯の間に琥珀くんの親指が差し込まれた。

下唇を噛んで耐えていた私は、思わずその指を噛んでしまう。

けれど琥珀くんは痛みに顔をしかめることもなく、私の頭をそっと撫でた。


「唇噛むな。声、我慢しなくていい」


でも。だって。意思に反して、こんな甘い声で啼いてしまうなんて。

自分が自分じゃないみたいで怖い。


「こ、こわい……」


本音が漏れた途端、押し出されるようにして目の端からぽろりと涙がこぼれた。


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