【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
すると、不意にぎゅうっと抱きすくめられた。
彼自身が放つ甘い匂いが鼻腔を満たす。
「大丈夫。怖くない、」
驚くほど優しい声が、私の心を撫で。
「莉羽」
彼の声で私の名前が奏でられただけで、私の心は徐々に落ち着きを取り戻していく。
私を抱きしめるその腕もあまりに優しいものだから、まるで大切にされているかのような馬鹿な錯覚を起こしそうになる。
「琥珀くん……?」
「悪い、飛ばしすぎたな。今夜はこうしていようか」
ベッドに横になって私を抱きしめたまま、あやすように私の頭を撫でる琥珀くん。
なんで優しくしてくれるの……?
私はただの夜の相手で、性 欲処理の道具でしかないはずなのに。
わからないよ、琥珀くんのことが。
――でも今だけは、この優しい温もりに身を委ねたいと思った。
直後、ふっと張り詰めていた糸が切れたように、私の意識はそこで途切れた。