【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
「実はね、環。私、親戚のお兄さんの家に引き取ってもらうことになったんだ」
「え? そうなのっ?」
それは学校まで送ってもらう途中に、車の中で必死に考えた架空のストーリーだった。
実家を出たことや、生活が急変したことは、きっと環には隠し通せない。
だけどまさかあの楪琥珀に買われたなんて言えないから、心苦しくも作り話をすることにしたんだ。
すると、なぜかにやりと笑った環が、指でハートマークを作って身をずいずい寄せてくる。
「なになに!? お兄さんって……もしかしてこれ、ラブの予感……!?」
どうやら環には、親戚という単語が届かなかったみたい。
私にこれまでまったく浮いた話がなかったから余程嬉しいのか、環の恋バナモードのスイッチが入っちゃってる。