【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
するとその時、車がトンネルに差し掛かった。
車内が闇に包まれる。
耳がキーンとするような闇の中、不意に東郷さんの声が聞こえてきた。
「……こんなことを頼むのはお門違いかもしれないが、あいつのこと、見ててやってくれないか。今、あいつの心の中に入れるのは、あんたしかいないかもしれない」
「え……?」
東郷さんの言うことは少し難しくて、すぐには受け止めきれなくて。
だって私は琥珀くんにとって、ただの愛人で、それ以上なんかには成り得ない。
飽きたら捨てられるか……それだけならましなのかも。
殺されることだってあるかもしれないのだから。
それでも少し、ほんの少しだけ、東郷さんの言葉を信じたいと思った。