【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
思わず夢中になってオムライスを頬張る。
と、不意に実家でお父さんとお母さんの食事の余りものを息を潜めて食べていた頃を思い、鼻の奥がつんとした。
あの頃は満足に食事をとれたことなんてなかった。
おいしいものをお腹いっぱい食べられるなんて、夢をみてるみたい……。
涙の気配を振り払うようにオムライスをかきこんでいると、自分は箸も手に取らず私の食事の様子を眺めている琥珀くんが笑う気配がする。
「はは、そんなにおいしいか」
「はい……。とっても」
こんなにおいしいご飯を食べさせてもらえるなんて、一時の施しかもしれないけれど、私にとっては涙が出そうになるくらい嬉しくて幸せで。