【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
はっとしてそちらを見れば、女子生徒がバレないように、でもたしかに環に向けてスマホを向けている。
「盗撮はやめてください」
私はすかさず手を伸ばし、環の前に立ちはだかる。
すると女子生徒は、忌々しいものでも見るように私を睨むと、ちっと舌打ちをした。
「最悪、鉄仮面女のせいで環ちゃんの写真撮れなかった」
──鉄仮面女。
それは、私についたなんとも不名誉なあだ名のこと。
しばしば、こうやって環の盗撮をしようとする生徒がいる。
今をときめくモデルが同じ高校に通っているのだから、写真を撮りたいという気持ちはわかるけれど、盗撮はいけない行為。
環の事務所自体も、モデルの勝手な撮影は厳しく禁止している。
だから私がこうやって止めるのだけれど、そうしているうちに男女問わず生徒たちに嫌われるようになり、いつしか“鉄仮面女”と呼ばれるようになっていた。