【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


すると、ほつれてきた私の髪を耳にかけながら、背後で琥珀くんがぽつりとこぼす。


「さっきからおまえ、変に頑張ろうとしてるけど、愛人にするつもりはないし愛人だとは思ってない」

「え?」


じゃあ私は、琥珀くんにとっていったい……。


私は思わず、肩越しに琥珀くんを振り返った。


髪が濡れ、肌から艶を放つ琥珀くんは、刺激が強すぎるほど色っぽくて。

どきりと鼓動が反応して、私は思わず見惚れてしまう。


琥珀くんは濡れた指で、前髪が張りついた私のおでこをそっと撫でた。


「莉羽ちゃんのこと、俺なりに大切にしたいと思ってる」

「……っ」


胸が、今まで感じたことのない動きできゅーっと締め付けられる。

つんと目の奥が痛んだのは、湯気が目に沁みたからではきっとない。


どうして……借金の肩代わりに売られたのに、どうして私は大切にしてもらえるの……?


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