【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
すると、琥珀くんのぶれない声が私の不安を覆い尽くした。
「それなら俺だって傷物だ。見ただろ、背中の傷」
なんで……。
「おまえは十分いい女だよ」
なんで、そんなに優しくしてくれるの……?
身体に巻いたバスタオルを解く琥珀くんの指に、抗わなかった。
湯船の中、私は素肌を彼の前に晒す。
すると、背後から胸元の傷を撫でられた。
慈しむように触れるその指に、すべてを勘違いしそうになる。
「……そういうこと、他の愛人の方にも言ってるんですか」
「ばか。おまえだけだよ」
艶やかな声が私を魅了し──腕を引かれた。
振り返る形になった私の唇に、彼の唇が重なる。
私は一瞬にして、快楽の波に引き摺り込まれた。