【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
すると環が、アイスを乗せたスプーンを私にあーんと向けてくる。
「そういえば最近、太陽くんから連絡はあった?」
私はそれを口を開けて頬張り、口の横を拭いながら答える。
「ううん。そういえば連絡とってない」
「そっかぁ。いつ戻ってくるんだろうね、太陽くん」
「ね。そろそろかな」
柏木太陽。
彼は私の唯一の幼なじみ。
保育園時代から高校までずっと一緒。
私のたったひとりの男友達であり、理解者である。
そんな太陽は、高校2年生――去年の夏から、オーストラリアに留学している。
1年くらいで帰ってくると言っていたから、夏頃には帰国するんじゃないかな。
私が肌身離さず着けているこのオリオン座のネックレスも、太陽がくれたもの……らしい。
もちろん太陽にはすごく会いたい。
でも、心配性の太陽のことだから、琥珀くんとのことを知ったらきっと心配するんだろうな……。
その時はどうにか説得しないと……。
いつ来るかわからない未来に、ほんの少し胃が痛くなった。