【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
そして17時を回った頃、環のマネージャーさんがカフェにお迎えに来た。
売れっ子の環は今日も夜までお仕事らしい。
環とお別れしてひとりになった私は、もうすっかり帰り慣れたあの大きなビルに向かって薄暗い道を歩く。
今日は曇り空だから、まだ17時だというのに辺りが暗い。
本当は東郷さんに迎えに行くから連絡しろと言われているけれど、遅くなってしまったうえにわざわざ来てもらうのは申し訳なくて、帰りますとメッセージだけ打ってひとりで帰ることにした。
慣れないスマホでメッセージを打つのは一苦労だけど、今日だけで連絡先にたくさんの人の名が増えた。
琥珀くんに環に、東郷さん。
意味もなく、何度もアドレス帳を開いてしまう。
だって、連絡先を交換してくれた人の名を見るだけで、幸せが込み上げてくる。
ボタンをひとつ押すだけで、私はこの人たちと繋がることができるんだ。
帰ったら琥珀くんに報告しなきゃ。
電話とメッセージを送ることができるようになったんですよって。