【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
すると琥珀くんは私の頭にぽんと手を置いて「ちょっと待ってろ」と囁くと、残ったひとり、黒堂の方へ近づいていく。
尻もちをついて動けずにいた黒堂は、近づく琥珀くんに「ひいっ……!」と悲鳴をあげる。
けれど腰が抜けているのか、逃げることはままならなくて。
「俺のもんに手出すなんていい度胸してんな、お前」
そして無慈悲にも黒堂を壁際に追い詰めたかと思うと、黒堂の髪を掴んで勢いよく壁に打ちつけた。
「うがっ」
鈍い音と黒堂の悲鳴に、私は思わず首を竦めてぎゅうっと目をつむる。
「す、すいまへん……」
「ああ? そんなんで許されると思ってんのか? この子が満足するまで土下座して詫びろ」
地を這うような低い声。
この世のすべてを圧倒するほどの闇。
「お前を消すなんて簡単なことなんだぞ」
見ているこちらの心臓が、恐怖でぞわりと縮こまる。