年下双子の溺愛トリック
「えっと、まだすぐは予定わかんないかも…。アハハ」
陽くんの口から飛び出した2人の名前に一瞬、戸惑ってしまった。
…そっか、陽くん。結木先輩達のこと名前で呼んでるんだ。
陽くんの彼女でもないくせに、そんな些細なことで嫉妬してしまう自分が本当にイヤになる。
その時。
「お…!春輝じゃん」
少し先を歩く春輝先輩の背中を見つけた陽くんが嬉しそうな声をあげた。
「ゴメン。姫奈、俺先に行くわ。あと、さっきの話は考えといて。俺も帰ったら密と素直に話とくから」
満面の笑みでそう言い放つ陽くんに私は結局、何も言えなくて。
「…う、うん。わかった。先輩達にもよろしく伝えてね」
未だに胸の中のモヤモヤした気持ちは消えないまま。
その場はなんとか笑顔で取り繕った。
「じゃあな」
「うん!またね」
ひらっと軽く手を振る陽くんの姿が生徒たちに紛れて見えなくなった頃、私はソっと肩を落とす。
陽くん、やっぱり…。
結木先輩と長松先輩のどちらかが好きなのかな?
心の中でため息をつきながら、私は1人トボトボと、自分の教室に向かって歩みを進めたのだった。