年下双子の溺愛トリック

そんなことを思い出し、心の中で大きなため息をついた時。

「ふーん…。俺が教えてやろうか?」

突然、そんなことを言い出すひーちゃんに私はパチパチと目をしばたたかせる。

「え?何を…?」

思わず、キョトンとした表情を浮かべた私に彼は呆れたように息を吐いた。

「何ってバスケだよ。明日クラスマッチなんだろ?つか、この状況で他に何を教えんだよ…」

「あ。あはは。そうだよね…。え、でもいいの?」

普段だったら、からかってくるだろうひーちゃんからの予想外の提案。
未だに信じられない気持ちで私がそう問いかけると。

「…貸してみ?」

先ほどひーちゃんから返されたボールを要求され、私は「はい…」と素直に手渡した。
 
次の瞬間。

ーーダムダム。バッ、ザシュッ。

…す、すごい!

その場でボールを数回つき、軽くボールを投げたひーちゃん。

私の時とは打って変わって、ボールは吸い込まれるようにゴールネットへと入っていく。

「ひーちゃん、すごい!何でそんなに軽く投げて入っちゃうの!?」

自分が何度やってもできなかったことを1回で、しかもいとも簡単にやってのけてしまったひーちゃんに私は興奮気味に詰め寄った。

「…ちょっと落ち着けって。とりあえず、姫奈も1回投げてみて」

「う、うん」

コクリと頷いた私は、近くに転がっていたボールを手に取り、再度ゴールに向かって向き直る。
< 43 / 56 >

この作品をシェア

pagetop