年下双子の溺愛トリック

「…えいっ」

狙いを定め、ひーちゃんのようにと投げてはみたものの、やはりボールはゴール手前で無情にも落ちてしまう。

「……」

「…あ〜…。わかった。姫奈ちょっとこっち。ボールも持ってきて」

「は、はい…!」

私のシュートを見て、一瞬引きつった表情を浮かべたひーちゃんだったが、すぐさま切り替えたように手招きをした。

「姫奈、構えて。とりあえず体全体に力入れすぎだ。そんなんじゃボールに力がうまくのらないだろ!ほら、肩とか腕とか力抜いて」

「う、うん…!」

私の背後から、指示を出すひーちゃん。

あれ…?ひーちゃんってこんなに大きかったっけ?

すっぽり覆いかぶさるくらい近い距離感に小さく息を呑む。

「手の角度はこうして。手首のスナップをきかせる」

「…っ」

1人で意識している自分がなんだか、だんだんと恥ずかしくなってきて、私は徐々に顔が火照るのを感じていた。





「は、はいった…。はいったよ、ひーちゃん!!」

「あぁ、頑張ったな…」

歓喜する私とは対照的に、疲れたような表情のひーちゃんは、ヨロヨロと近くのベンチに腰を下ろす。

みっちり30分。
私はひーちゃんの指導のもと、なんとか10回に1回くらいの確率でシュートが決まるくらいには上達していた。
少し前の自分じゃ考えられなくて、ひーちゃんの教え方の上手さには本当に頭が上がらない。

「ひーちゃんのおかげだよ。明日、頑張るね」

ニコッと笑顔を浮かべて、彼の隣に座った私。

「そういえば、今日、すーちゃんは一緒じゃなかったんだ?」

ふと、いつも一緒のすーちゃんの姿が見えなかったことを今さら思い出し、ひーちゃんに問いかけた。

「素直は、生徒会」

「そっか。すーちゃんも忙しいね」
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