年下双子の溺愛トリック
「すーちゃん、あの…。実は明日のクラスマッチに急遽出ることになって。たまたまひーちゃんが通りかかって、バスケ教えてくれてね…」
しどろもどろになりつつ、取ってつけたような説明をする私にすーちゃんは、「そうなんだ、姫奈ちゃんバスケ出るんだね〜」と、穏やかな視線を送っていた。
あれ?すーちゃん、いつも通りだ。
もしかして、さっきの見られてなかったのかも…!
だって、あんなの見てたら絶対何か言われると思うし…。
普段と変わらないすーちゃんの様子に、そんなことを思い始めた矢先。
「…帰る」
ひと言そう呟いたひーちゃんがおもむろにベンチから腰を上げ、私とすーちゃんの間を横切って行く。
「あ、密〜!帰ったらちょっと話あるから」
「……」
そんな彼の背中に声をかけたすーちゃんから、なんだか若干、黒いオーラが出てる気がして、ゾクッと背筋に悪寒がはしるのを感じた。
「よし。姫奈ちゃん、密は先に帰っちゃったし、僕が送ってくよ」
「うん…。ありがとう」
先ほどと打って変わって、爽やかに微笑むすーちゃん。
私は、黒いオーラは見間違いだったみたいだと、ホッと胸を撫で下ろす。
そして、一緒に歩き出した途端、なぜかすーちゃんにギュッと右手をつかまれ、優しく引っ張られた。
「え、すーちゃん…!?」
「…家まで、ね?」
「〜っ…」
ドキン。
いたずらっ子のように私に微笑みかけるすーちゃんに、私はそれ以上何も言えなくて。
今日は、すーちゃんもひーちゃんも本当に意味不明なんだけど!?
2人のワケのわからない行動に終始振り回され、私は小さく肩を落としたのだった。