年下双子の溺愛トリック

苦笑いを浮かべる私に気づいていないのか、陽くんはいたって普段通りの様子で。

「んじゃ、姫奈また明日な」

「う、うん…。またね」

結局、何事もなかったかのように家へと入っていく彼の背中を見つめ、私は手を振ることしかできかった。

嘘でしょ…?
あんなにハッキリ言ったのに、伝わってないこととかある??

なんだか悲しさを通り越して、そこまで意識されてないのかと一気に力が抜けてしまった私。

そして「ハァ…」と大きなため息を1つついた、その時。

「…プッ」

「こら、密(ひそか)。笑ったら姫奈ちゃんがかわいそうだろ…」

聞き覚えのある声に私はビクッと肩を震わせる。

今の声って…。

おそるおそる声が聞こえた方向に視線を向けると、私と陽くんの家の近くにある電柱のカゲから出てきたのは…。

「ひーちゃん、すーちゃん…今の聞いてたの!?」

私の幼なじみで、陽くんの弟にあたる双子の兄弟、道枝密(ひそか)と道枝素直(すなおの)2人だった。

ひーちゃんこと道枝密とすーちゃんこと道枝素直は、私より1歳下の中学3年生。
小さい頃は、天使みたいに可愛くて…。
「姫奈(姫奈ちゃん)、遊ぼ〜」と毎日のように私の後ろをついて回っていたのに。
中学生になった頃くらいから、顔を合わせれば、小馬鹿にしたようにからかってくる始末で…。

私もほとほと困り果てていた。

だからこそ、私は彼らの姿を見つけて、サーッと血の気が引いていく。

まさか、ひーちゃん達にバレちゃうなんて…。
絶対にからかわれるに決まってるもん…!
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