最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
そのバンドを飯田さんから紹介されたあとは、あれよあれよという間に晃司との距離が縮まっていった。

何度かデートを重ねたときに『絶対デビューする』『そろそろ声をかけてもらえそうなんだ』

と、嬉しそうに夢を語る姿に胸がキュンとしたのも事実だった。
大学卒業後周りに流されるように就職した杏奈から見た晃司はキラキラと輝いていた。

……が。

今目の前にいる晃司は杏奈の入れたコーヒーが熱すぎたという理由で不機嫌になり、持ち前の吊り目を更に釣り上げて怒鳴っていた。

床に膝をついた杏奈は顔をあげることができずに、そのままうつむき続けている。

「お前さぁ、それでもバンドマンの嫁になる気があるわけ? バンドマンって、お前が思ってるよりもずっと繊細なわけ。わかる?」

「はい、わかります」
杏奈は小刻みに震えながら返事をする。
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