最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
☆☆☆

産婦人科から飛び出して息が切れそうになったところで右手手首を掴まれて立ち止まっていた。

「バカ! 妊婦が走るとか何考えてんだ!!」

怒鳴り声に振り向くと、そこにいたのは目を吊り上げた稔の姿だった。

こんな姿を見られて恥ずかしい。

左手で自分の顔を隠してうつむくけれど、もう自分が誰であるかバレてしまった。

今更隠しても遅いと思うのに、隠さずにはいられない。
「どういうことか、説明してもらおうか」

少し落ち着いてきてから稔が静かな声で言った。
その表情はさっきよりも柔らかくなっているけれど、声色は険しいままだ。

ここで稔を突き飛ばして逃げることはできる。
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