最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
「わかってんなら最初っからやれよな!」
更に大きな声で怒鳴られて杏奈の体がビクリと跳ねた。

ここまで怒鳴っておいて手が出ないことが不思議なくらいだ。
杏奈の背中には緊張によってダラダラと汗が流れていく。

呼吸をすることも苦しいくらいの空間から、一刻も早く解放されたいと願うばかりだ。

「もういいや、お前全然使えねぇ」
ふぅと大きなため息が聞こえてきて杏奈はそろそろと顔を上げた。

こうして杏奈への文句を並べ立てた後に大きなため息を吐き出すのは、もう終わりという合図だった。

杏奈はすぐにコーヒーを入れ直すために立ち上がる。
普段はこれですべてが終わるはずだった。

晃司が怒鳴り、杏奈が謝って言うとおりにさえ、していれば。
だけど今日は違った。
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