最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
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稔の家の玄関先にたち、杏奈は大きく深呼吸をした。
右手には白い紙袋を持ち、中には稔の両親が好きな和菓子が入っている。
「母さん、帰ったよ」
稔がチャイムを鳴らして声をかけると、すぐにスリッパの音が聞こえてきて玄関が開いた。
出てきたその人は杏奈の記憶にある稔のお母さんよりも、少しだけ白髪が増えただけだった。
見慣れた笑顔を浮かべて稔と杏奈を交互に見る。
「あ、あの。辻杏奈です」
形式通りに頭を下げて挨拶すると、おばさんが声をあげて笑った。
「あらあら杏奈ちゃん。そんな自己紹介必要ないのに。さぁ、入って入って」
リビングに通されてソファに座ると、幼い頃ここで稔と一緒に遊んだことを思い出した。
あの頃はふたりともテレビゲームに夢中だったんだっけ。