最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
それに自分は他の人と付き合っていたのだから文句を言うことはできない。
それでも杏奈の胸に微かな嫉妬心が芽生えてしまった。

「それで、もうひとつ報告があるんだ」
しばらく雑談した後、稔が今度は真剣な顔つきで言った。

その変化に両親も居住まいを正す。
杏奈は自分の心臓が今にも口から飛び出してきそうなほど緊張していた。

「実は、杏奈はいま妊娠してるんだ」
稔の言葉が部屋中にこだまするようだった。

一瞬の沈黙の後、両親から歓声が湧き上がった。
「そうなのか!? それじゃ二重でおめでたいじゃないか!」

「私達、おばあちゃんとおじいちゃんになるのね」
ふたりは顔をほころばせて無条件で喜んでいる。

その顔を見ていると胸の奥がジクジクと痛み始める。
この子は稔の子じゃありませんという言葉が、なかなか喉から出てこない。

「だから、楽しみにしててよ。俺と杏奈の子供が産まれるのをさ」
稔はそう言ったのだった。
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