最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
☆☆☆

結婚挨拶は実にスムーズに進んでいき、あっという間に帰る時間になっていた。

帰りがけの玄関では稔のお母さんがお土産を山程くれて稔の両手が完全にふさがってしまうくらいだった。

ふたりの暖かさに触れて駅まで帰る道のりで、杏奈の心はどうしてもモヤモヤしていた。

優しいふたりに嘘をついたままでいいんだろうか。
稔の両親は赤ちゃんを稔の子だと少しも疑っていない。

だけどそれはふたりをこの先もずっと騙し続けることになるのだ。
そう思うと胸の奥がチクリと傷んで、杏奈は立ち止まっていた。

「どうした?」
駅の構内へ入ろうとしていた稔が気がついて同じように立ち止まる。

「ごめん稔くん。私やっぱりふたりに嘘はつけないよ」
グッと拳を握りしめてそう伝えると、稔は驚いたように目を見開いた。
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