最低な元カレにフラれたらイケメン医師に成長した幼馴染からの溺愛がはじまりました。
「な……なに言ってるの!? そんなことできるわけないでしょう!?」
杏奈の悲鳴に似た声がデパート内に響き渡る。

驚いた人たちが立ち止まってこちらへ視線を向けてくるけれど、途中で止めることはできなかった。

「付き合ってたころから好き勝手してたくせに、今更出てきて父親面しないでよ!!」

前回言えなかった言葉が喉の奥から溢れ出す。

妊娠がわかったときも、出産したときも本当の父親である晃司はどこにもいなかった。

それなのに今更父親として接するなんて、図々しいにもほどがある!

「頼むよ杏奈!」
晃司がすがるように両手を伸ばしてくる。

一瞬触れられたかと思うとポケットの中になにかねじ込まれるのがわかった。

すぐに取り出して突き返したかったけれど、奈美を抱いているのでできない。
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