トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~
 出張という名の神戸旅行二日目。朝食はルームサービスを二人分取って絢乃さんのお部屋で二人で頂き(支払いも彼女のルームナンバーにつけてもらった)、午前中から二人で神戸観光に繰り出した。

 前日に満喫した水族館のあるミュージアムから少し足を延ばし、四月にリニューアルオープンしたばかりのポートタワーの展望デッキへ上がっていった。その日は天気にも恵まれ、そこからは明石(あかし)海峡大橋やその先に続く淡路島――川元支社長の出身地だ――、さらには四国のあたりまで一望できて、二人して「わぁ、スゴいねー!」「すごいですねー」と歓声を上げていた。
 タワーの中にはショップやアトラクションも色々あって、僕たちみたいな大人もお子さんも楽しめるようになっている。
 展望フロアーの三階には三百六十度回転するカフェがあり、僕たちは展望デッキから見た景色を眺めながら大好きなコーヒーを楽しんだ。

「――さて、この後はどうします?」

 神戸という街にはまったく土地勘がないので、コンビニで買ったガイドブックを広げながら絢乃さんに次の予定を訊ねると、ポートアイランドにある〝どうぶつ王国〟に行きたいとリクエストがあった。三宮まで戻れば新交通システム一本で行けるらしい。ここでしか見られない、珍しい動物もたくさん飼育されているようだ。

「じゃあ、そこに行きましょう」

 ガイドブックをよく見ると、同じ人工島にはコーヒー博物館もあるらしい。僕のリクエストでそこにも行って、博物館の近くで昼食を済ませてから東京に帰ろうということになった。


 絢乃さんは動物がお好きなようで、神戸どうぶつ王国では可愛い動物たちにほっこりと癒され、動かない鳥ハシビロコウが動いた瞬間には大喜びされていた。
 コーヒー博物館はかつて神戸で海洋博覧会が行われた時の、パビリオンだった建物を利用したコーヒーのミュージアムだそうだ。コーヒー好きとしては、一度は訪れてみたい場所だった。
 僕もかつてはバリスタを目指していた身だが、その夢を諦めてしまった理由を絢乃さんに話したことはなかったので、この機会に打ち明けようと思った。
 僕がバリスタになりたいと思っていたのは高校時代のことだが、その頃すでに自分で飲食店をオープンさせるべく働いていた兄が、「兄弟で一緒に店をやろう!」としつこく言っていたのでウザくなり、僕は自分の夢を諦めるに至ったのだ。
 実に下らない理由だったので絢乃さんに呆れられるかと思ったが、彼女は「なぁんだ、そんなことかー」とバカウケして下さった。
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