トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~

抑えきれない想い

 ――こうして、絢乃会長と会長秘書である僕・桐島貢の多忙な毎日が始まった。
 
 会長は就任当日の午後から意欲的に取材を受けられ、その媒体(ばいたい)は新聞社・経済誌・ニュースサイトから果てはTV局まで多岐に渡った。学校が忌引きでお休みの時はほぼ一日中、それが明けてからは加奈子さんと交代された夕方から退勤までの間、受け得る限りの取材をこなしておられた。

 彼女はどんな質問にも真摯に受け答えされていたが、あまりにもプライバシーに踏み込まれるような質問が来ると、「取材はここまでです」と僕が途中で打ち切ることもあった。
 中には、「その取材はおやめになった方が……」と僕がストップをかけた取材もあったが、彼女から「お願い、受けさせて」と言われてしまったら僕もそれ以上ダメだとは言えず。
 ――それが、TVのニュース番組の取材だった。

「――会長、TVの報道番組から取材の申し込みがあったんですが、どうされますか?」

 それは絢乃さんが会長に就任された半月ほど後のことだった。その頃は放課後からの出社だった彼女に、僕は午前中に受けていた取材交渉の電話のことをお伝えした。

「報道番組? それって全国ネットの?」

「はい。夕方のニュース番組で、若手経営者の特集を組みたいとかで。絢乃会長をその第一弾に、と」

「へぇ……。でも、わたしなんかが第一弾でいいのかな? 自分の力で起業した人もいっぱいいるのに」 

 彼女は困ったようにおっしゃったが、どうも取材を受けることには前向きなようだった。そうなれば、お悩みの彼女の背中をうまく押して差し上げるのが秘書として、そして彼女を愛する一人の男としての僕の役目だと思った。

「…………会長は、お受けしたいんですね? 何か引っかかっていることがおありなんですか?」

「うん、受けたいとは思ってるよ。ただ、社内にTVカメラが入るとなると、社員のみなさんのプライバシーにどこまで配慮してもらえるかな……と思って」

「かしこまりました。それも含めて、局に僕から連絡しておきます。一度打ち合わせも兼ねて、TV局の方をお呼びしましょう」

「そうしてくれる? ありがと!」

 ――というわけで、TV局の人と実際にお話をしてから取材をお受けるすかどうか決めましょう、ということになった。
 ご自身がTVに映られることにもまだ抵抗はあったと思うのだが、それよりも社員のプライバシーのことを心配されるなんて、絢乃会長は本当に優しくて社員思いな方だなぁと僕は思ったのだった。
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