蒼に、跪く。
振り返って、その声の主を視界に入れる。私よりも年上だろうか。黒い髪と瞳。それから黒ずくめの衣服。夏だというのに、全身を覆い隠すような格好に不気味さを覚えたのをよく覚えている。
---怪しい。この人、絶対不審者だ。
なんて、失礼なことを思いながらも、絵と同様にその存在にも呑み込まれた。
目を逸らさないまま、謎の空白と時間だけが過ぎて。
「…やっぱり、人に褒められると嬉しいものですね」
口元を歪ませ、言葉を聞く限り喜んでいるのだと思われるが、瞳の奥は笑っていなくて。酷く奇妙で、アンバランスに感じた。
「それ、僕が描いたんです」
「あ、そうなんですね。とても綺麗で見惚れてしまいました」
距離を置いた方がいい、と脳内で警鐘は鳴らされていた。にもかかわらず、足がまるで動かない。雰囲気に、言葉の一つに、紡がれる音が、まるで鎖のように自由を奪っていくような、そんな感覚。