蒼に、跪く。



「よかったらその作品、貴女にあげましょうか」

「…え?」


然もなんてことのない、というように突飛な発言をする男。普通、初対面の人にそんなことを言うだろうか。


「いや、その、…流石にそこまでは、」

「どうせ明日になったら捨てるんです。それは、欠陥品だから」



冷たく吐き出された“捨てる”という言葉。こんなにも壮大で、素人目にでさえ美しく描かれたように見える作品でさえも、作者にとっては異なるものだったのかもしれない。



だけど、こんなにも心を打たれる作品が不要だとされるのはなんだか癪だった。



「…じゃあ、頂いても良いですか」

「ええ。…持ち帰りやすいように纏めますので、僕のアトリエまできてください」



見た目や、距離のつめ方は不審で仕方がなかったけれど、この時の私はただ何かに惹かれるように彼のあとを追いかけた。




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