どんな君でも愛してる
「父さん、少し待ってくれ。とにかく、いつ退社できるかもわからない。それに、今やっている課はノアの商品も多い。彼らを不安にさせるような辞め方はしたくない」
「……」
「どういう風にもっていくかは俺に任せてくれないか」
「わかった。だが、どちらにしろお前が戻ることをきっかけにSUNAも変わるといいがな」
俺は今の課のみんなに実はノアケミカルの社長の息子だと話していない。会社名と苗字も関係ないので、言わないと誰も知らない。このことを話して彼らが畏縮するのも嫌だし、特別扱いされるのも嫌だった。
だから、入社当時の上司と人事部長、社長ぐらいしかそのことを知らなかったのだ。
北野さんとの縁談も、社長が北野社長と企んでいるらしいというのは父からも聞いていた。こういう風になるのが嫌だから黙っていたのに、最悪だった。
やっと縁談が消えたというのに、今度は……次から次だ。だが、父の気持ちもわからないではない。どう話を持っていくか悩み始めた。