どんな君でも愛してる

 彼は丁寧に母にお辞儀をしてくれた。おそらく、彼は仕事前に寄ったのだ。部屋の時計を見ていたので何か予定があるのだとピンときた。

「凛花、時間がないのわかったんだな。もう、元の凛花だ。ああ、良かった……最初聞いたときは心配と後悔で息が止まるかと思ったよ」

「ねえ、信也さん……。私、やっぱりSUNAを辞めようかな。信也さんの新しい会社で雇ってくれますか?」

「凛花!」

 私はゆっくり話した。記憶がようやく戻った。どうして工場にいたのか……。

 母は会社のほうから今回のことは労災だと説明されたらしい。もちろんそうだろう。だが、よく考えれば工場で怪我をしたことも、やり慣れない仕事を無理してやったからに他ならない。
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