どんな君でも愛してる
本来なら工場に行く必要はなかった。私は社長から責められるようなことは何もしていなかった。彼の素性も、北野さんとの縁談も知らなかった。
社長は私の言い訳も、人事部長の話も無視した。ふたつの大きな取引先を失いそうになり、責任転嫁されたのだ。
前の人事部長の左遷に申し訳ないという気持ちが先に立って、贖罪のつもりでこの転勤を受け入れた。でも私に贖罪する必要があったのだろうか?
この会社は好きだが、不当な理由で社長に睨まれてまでしがみつく必要はないかもしれない。
ようやくこの怪我でそんな当たり前のことを悟った。退社する勇気がなかった。
でも信也さんの言う通り、もっと早く決断していれば……前の人事部長の左遷もなかったし、この工場への転勤もなかった。