どんな君でも愛してる

「私を庇って左遷された人事部長のことを考えて贖罪の気持ちもあってここへ来たの。でもこうなってみてやっとわかった。私は悪くない。信也さんだって、北野さんと結婚しなかったのが悪いわけじゃないし、会社はそんなことに口を挟むのがまずおかしいものね」

「そうだよ、その通り。こういう、政略結婚がらみの縁談なんて世の中に掃いて捨てるほどある。でも、別な決断をする人も大勢いる。政略結婚でうまくいく人もいるが、そうじゃない人もいる」

「ある意味、頭を打って良かったのかも。固い考えから解き放たれちゃったみたいだわ」

「馬鹿!何言ってるんだ。君の事故を聞いたとき、本当に心臓が止まるかと思った。そしてすぐに連絡をもらえない今の状況を呪った。もう、絶対に君を手元に置くと決めたんだ」

「信也さん」

 彼は腕時計を見た。そして辛そうに言った。

「ごめん、時間だ。そろそろ行くよ。また夜に来る」
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