どんな君でも愛してる

「いや、前の人事部長の左遷といい、ひどい話だ。正直、ここだけの話だが上には不信感しかない」

「彼女は商品の数を把握するために在庫を見に行ったらしいですね。工場の現場の仕事もしていたんですか?」

「いや。工場のほうで現場の仕事もさせるようなことがあったとは、聞いていなかったんだよ。あくまで事務移行の手伝いだったはずなのでね」

「三か月隠れておいでと言ってもらったと電話では言ってました。前の人事部長に申し訳なくて辞められないとも……」

 人事部長は頷いた。そしてため息をついた。

「まあ、最近は噂も鎮火してね。当事者がいないんだから当たり前だけど、彼女の同期があちこちで本当のことを話しまわっていて、ようやく落ち着いてきたところだったんだ」

 相川と笹野だな。凛花の親友だ。あいつらがきっと話を回しているんだろうと思った。
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