どんな君でも愛してる
「そうですか。私の辞めた時期も悪かったんです。北野化学が離脱した時期でしたし……」
「いや、驚いたよ。北野さんとの縁談まで社長が勧めていたとは……北野さんのことは、まあ社長令嬢だし見て見ぬふりを皆してきただろう。君が彼女を選ばないのも当たり前だ」
「もとはそんな話ではなかったんですけど、北野化学の業績が悪化してきて、あちらからもちかけられたようでした。僕はその頃東北の支店にいましたので、当事者抜きで話が進んでいたようなんです」
「なるほどね。それで君がこっちに戻ってきたのを知った北野社長は、うちの社長を巻き込んで君を捕まえようとしてたわけだね」
「そうですね、ノアの義理の兄が口車に乗せられ、北野化学の業績悪化を知らずに条件だけ聞いて、縁談の話に乗ってしまったようなんです。父はそれを知って、俺を戻そうと思ったようで……」
「そういう事情をきちんと説明すればよかったな。うちの社長は逆恨みしてるんだろう」