どんな君でも愛してる

「あ、私は北野美嘉です。父が北野化学の社長です。昔一度父と一緒にお目にかかったことがあります。覚えておられます?」

「北野さん?まさか、君がそうだったのか……。ふうーん……昔会ったこと?いつのことだろう。申し訳ないがほとんど覚えていない」

 彼女が並木さんの目の前で手を組み合わせてもじもじしている。これはもしや……。周りも皆こっちを見てあきれている。

 私はふたりの邪魔をしないように少し下がって、PCを確認した。

 並木さんが申請している社宅関係や着任書類をざっとみた。足りないものがあったので、彼に言った。

「並木さんすみません。通勤交通費の請求をしてください。通勤経路決まっておられますよね。システムの中に書類ありますので、打ち込んで送ってください。それは北野さんが担当になります。ね?北野さん」
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