どんな君でも愛してる
並木さんを見ると、意地悪な瞳が輝いている。
これは従わないとまずい。声色で気持ちが通じてしまう程度には、親しくなっていた。しょうがないから返事をする。
「そう、でした。すみません、わかりました。でも北野さん、私忙しいから、たくさん手伝ってもらうからよろしくね」
北野さんはにらんでる。めんどくさい。巻き込まれたくない……まあ、北野さんのことで並木さんが懲りてるのはわかるから、ここはとりあえず頷いたふりをしよう。しょうがない。
すると並木さんが突然北野さんの前に立った。彼女が嬉しそうに顔を赤らめる。そんな彼女を見て、並木さんはため息をつきながら話し出した。
「北野さん……。昔のことは忘れてしまって悪かったけど、つい最近の君のことはよく覚えてるよ。仙台の篠田が君に依頼した仮払旅費のことだ。あれ、時間がなくて俺が事務の篠田に書類作成と手続きを頼んだんだ。営業担当の望月の分がほとんどだったが、僕の分もあったんだよ」