どんな君でも愛してる
「……え、あれ……」
彼女は私のほうを見て顔色を変えた。ミスをして違う人にお金を振り込んだ一大事件のことをようやく思い出したようだった。
彼女はすっかり忘れていたのかもしれない。何しろ申請書類が分かりづらく、不備だったから間違えたと言って、自分のミスを仙台の事務担当の篠田さんに責任転嫁して逃げたのだ。
「大丈夫よ、北野さん。私が篠田さんに連絡して仮払間に合わせておいたって言ったでしょ……あの、並木元仙台支店長、その際は本当にご迷惑おかけしました。彼女の指導員は私ですので、私の責任です」
北野さんは手を口に当てて青くなった。
「まあ、人には誰でも間違いはあるからね。素直に謝ればよかったのにな。あの時、少なくともうちの篠田には全く非はなかったはずだ」