どんな君でも愛してる

 彼はそう言うと、背中をくるりと向けてなぜか部長のところへつかつかと歩いて行った。

 そして、耳元で何か話しかけている。部長は驚いた表情で彼を見つめ、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。

 彼は話が終わったんだろう、ここを出て行った。

 そしてそんな彼をじっと見ていた北野さんはくるりと私のほうを振り向くと、凄い低い声で私を呼んだ。

「……川村さん」

「何?」

「あれって、並木さんの出張仮払だったんですか?」
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