どんな君でも愛してる

 仙台の事務だった篠田に自分のミスの責任をなすり付けて、あげくには関係のない川村さんに後始末をさせた北野という女子社員だった。

 彼女は嬉しそうに俺と昔会ったことがあるという。顔を見てうっすらと思い出した。確かに業界のパーティーで顔を合わせたことがあったかもしれない。

 父が最近縁談を持ち掛けてきた、例の北野化学の娘が彼女だったとは正直吐き気がした。

 彼女は俺との結婚を親から聞かされていたのだろう。俺が来るのを待ち構えていたようだった。

 だが、仙台の一件に俺が絡んでいることを彼女は知らなかったようだ。愚かすぎる。

 あのとき、担当者だった彼女に謝らせず、なぜか庇うように部長自身が謝ってきた。そして川村さんにあとのことは任せてあるから多分大丈夫だと言ったのだ。

 おそらくコネ入社の彼女に忖度して、きちんと責任を取らせなかったのだ。
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