どんな君でも愛してる

「もしかして……何かあった?」

「お前……」

「ここに呼ぶということは母さんに聞かれたくないんでしょう。最近姉さんも帰ってきていることが多いようですしね。姉さんの耳にも入ると面倒ということですか?」

「まあな。とりあえず、お前の北野化学との縁談は断っておいたぞ」

「本当ですか?ああ、助かった。彼女はうちの人事で預かっているんですが、ミスを人になすりつけるとんでもないお嬢様ですよ。誰に紹介されても絶対お断りです」

 父さんはお猪口を持ち上げたまま、固まった。そして顔を覆って笑い出した。
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