クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
第一章 契約結婚をすることになりました
クリスマスまで二週間ほどとなった金曜日の夜。

白川美緒は扉が開くと同時に電車を降り改札口へと足を向けた。

ここは国内屈指の乗降者数を誇るターミナル駅で、今も大勢の人が行き交っている。
 
美緒もダークブラウンのストレートの長い髪を揺らしながら、人波を縫い歩みを速めた。

色白で小顔、大きな目を縁取る長いまつげが印象的な美人で周囲からはクールに見られがちだが、今は頬を紅潮させ表情にも焦りの色が隠せない。

本当なら余裕をもってここに来る予定だったのだが、午後からの会議が長引き会社を出るのが遅くなってしまった。
 
美緒が勤務している『箕輪デリサービス』は、企業や学校、病院などの施設のフード及びサポートサービスを主軸にケータリングや飲食施設の清掃、管理などのトータルサービスを行っている。

入社四年目で二十六歳の美緒は、企業の社員食堂の運営を企画・担当する営業部営業一課で働いている。

売上げの柱を担う部署で忙しく、今日も最近受注した大手建設会社の社員食堂の運営について課内で意見を交わしていたのだが、場が盛り上がり終わった時には終業時刻を大幅に過ぎていた。

そのせいで食事の約束をしている日高匠との待ち合わせに遅れているのだ。

前回匠と顔を合わせたのは、学生時代の共通の知り合いの結婚披露宴だ。

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