クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
クリスマスツリーの近くで待っていると返事があったのだが、どこにいるのだろう。

混み合う広場をキョロキョロ探していると、クリスマスツリー近くに匠の姿を見つけた。

長身で手足が長くモデル体型の匠はグレーのロングコートが似合っていて、遠目からでも抜群の存在感を放っているのがわかる。
 
クリスマスツリーを見上げる横顔は、鼻筋がすっと通り彫刻のように整っている。

周囲の女性たちがチラチラ視線を向けているが、気づかないのか素知らぬ様子だ。
 
匠の女性人気は学生の頃から変わらないなと苦笑し、歩みを進めた。
 
すると匠も美緒に気づき、極上の笑顔で近づいてくる。

美緒しか目に入らないとでもいうようなまっすぐで優しい笑顔にドキリとし、思わず息を止める。

自分は匠にとって特別な相手だと、誤解してしまいそうだ。

けれどそれはあり得ない。

美緒は束の間心に浮かんだ思いを胸の奥に抑え込み、匠のもとに駆け寄った。

「遅くなってごめんなさい」

「謝らなくていいよ。美緒が忙しいのはわかってるから大丈夫」
 
匠は穏やかな笑みを浮かべ、美緒の顔を覗き込んだ。

アーモンド形の魅力的な瞳には優しい光が滲んでいて、視線を向けられるたび緊張する。

出会ってから十年以上経つというのに、今も顔を合わせるとこの調子だ。

< 3 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop