クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
「私も……です」

美緒は小さく呟くと、さらに熱くなった顔を見られないようにそっとうつむいた。

美緒と匠は国内でも超進学校として知られる私立の中高一貫校『景和学園』の卒業生で、在学当時はふたりとも六年間の学費免除という成績優秀者だった。
 
美緒が中等部に入学したとき、匠は高等部の二年生。

生徒会長だった匠は、全国模試で毎回上位に入る優秀な成績と端整な顔立ちで、学園内でその存在を知らない人はいないほどの有名人だった。

美緒も入学式の時に壇上で挨拶をする匠の姿にときめいたひとりだ。

中学一年生にとって四歳年上の男性はひどく大人に見え、その堂々とした佇まいや柔らかで優しい眼差しから目が離せなかった。

とはいえ匠は教師や友人たちからの信頼が厚く、おまけに日高製紙という大企業の御曹司。

美緒にとって匠はどこをどう切り取っても完璧な、手の届かない憧れの存在。

たまに校内で顔を見られるだけで満足だった。

そんな中、成績優秀で真面目な美緒はクラス内で頼られることが多く、当然のように学園祭の実行委員を任された。

中等部と高等部が合同で行う学園祭の目玉は、生徒会の役員たちで上演する演劇だった。

その年の演目はシンデレラで、もちろん王子様役は匠。

実行委員の美緒は匠の衣装を担当することになり、彼に似合う華やかで舞台映えする衣装を作り上げた。

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