クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
美緒が頷くと同時に匠は金色のリボンを外し、赤い包装紙を慎重に剥がしていく。

現れたのは、厚さ三センチほどの細長い白い箱だ。

匠は待ちかねたように箱を開いた途端、目を見開いた。

「今年もまた凝ってる……かなり時間がかかって大変だっただろ」

感心する匠の声に、美緒は顔を横に振る。

「全然です。毎日少しずつ針を刺して、楽しんでました」

「それにしても……ありがとう」

匠は箱の中から一本のネクタイを取り出した。

「毎年この時期は、今年はどんなネクタイを仕立ててくれるのか、楽しみなんだ」

匠が手にしているのは、美緒がここ一カ月時間を見つけては丁寧に仕立てたネクタイだ。

濃紺のウール生地に、美緒がひと針ひと針気持ちを込めて施した銀糸の格子模様の刺繍が映えている。

会社の仕事だけでなく学生の頃から続けている洋服づくりとネット販売の作業もあり時間を作るのに苦労したが、美緒にとっては年に一度の大切なイベント。

匠の喜ぶ顔を想像しながら針を刺す時間は充実していて、他では感じられない幸せな気持ちを楽しんだ。

「去年のレモンイエローのネクタイも気に入ってるけど、今年も手が込んだものを用意してくれたんだな。会社も洋服作りも忙しいのに毎年ありがとう」

匠は美緒を見つめ、柔らかな笑みを浮かべる。

「……気に入ってもらえたようで、よかったです」

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