クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
美緒は無意識のうちに詰めていた息をそっと吐き出した。

ネクタイに限らず普段から質のいい品をあつらえている匠にとって、美緒が仕立てたネクタイなど大した価値はないはずなのに、毎年こうして喜んでくれる。

匠が美緒をがっかりさせるようなことは言わないとわかっていても、気に入ってもらえたとわかりホッとした。

「早速だけど、使わせてもらっていいか?」

匠は言い終わるや否や美緒の答えを待たず、それまで身につけていたグレーのネクタイをするりと外した。

「あ、あの、匠先輩……」

「偶然にしても、このスーツのために仕立ててくれたみたいだな」

匠はたった今美緒からプレゼントされたネクタイを首に回し、手慣れた動きで結び終えた。

ネクタイは匠が着ている紺色のスーツとの相性がぴったりで、よく似合っている。

これまで毎年ネクタイをプレゼントしてきたが、直後にこうして身につけてもらえたのは初めてだ。

もちろん身につけてもらえるのはうれしいが、予想外のことに動揺し言葉が出てこない。

「シルクもいいけど、この時期はウールもいいな。美緒のイメージを壊してなければいいけど、似合ってるか?」

「は、はい。もちろんです。とても似合っていて、イメージ以上です」

思いがけない展開に驚きつつ、美緒は何度も頷いた。

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