毒で苦い恋に、甘いフリをした。
4

天使不在

花火大会以降、ニカと黒崎くんは無事、恋人同士になった。

夏休み最後の日。
ニカと映画を観に行った。

観たい映画があったわけでもないのに、
なんとなく映画が観たいよねって合流した私達は、
映画の醍醐味ってポップコーンだよねなんて言い合って、

映画館のポップコーンの味って、映画館でしか味わえないよねなんて言いながら、
どっちも別に好きじゃないアクション映画を観た。

詳しくない私達からは「身体能力スゴ…」とか「音えぐかった」とかしか感想も出てこなくて、
夏休み最後の思い出は「やっぱり映画館のポップコーンは最高」になった。

「ね、どっちから告ったの?」

「なーにが」

「何がって一個しかないじゃん」

映画のあと、カフェでパンケーキを食べた。
生クリームが苦手だけど、フルールがたくさん乗っていて食べやすかった。

花火大会の日、ゆうれいが「ゆめ、やっぱり足が痛いって」ってニカに連絡してくれて、
そのまま先に帰ることになった。

謝らなきゃいけないのは私のほうなのに、
ニカは私を一人にしたことをすごく謝っていて申し訳なかった。

「んーっと、黒崎から」

「へぇー!やるじゃん、黒崎くんっ」

「黒崎のこと冷やかさないでよねー」

「そんな勇気ありません。花火大会の日?」

「うん。花火が終わったらさ、私達も帰りはバラバラになって。そん時に」

「なんて!?」

「別に普通だよ。今更だけどちゃんと付き合おうって」

「熟年カップルみたい」

「熟年!?」

「冗談です。でもよかったね。ほんとにおめでとう」

「ありがとう、結芽」

「ほんとにうれしい」

「なんで?」

「大好きな親友が本当に好きなひとの彼女になれたんだもん。うれしいに決まってんじゃん」

「…いい子だねぇ」

「そうだよ。知らなかったの?」

「知らなかったー」

「えー」

「結芽のおかげだよ」

「いやいや。なんもしてないから」

「結芽が諦めちゃだめだって教えてくれた。花火も結芽が誘ってくれたからだし。結芽がいなかったらなんにも変われてなかった」

「そう?ならよかった」

「うん。ありがとう」

「へへ」

こんな風に、ニカと素直に恋バナをしたのは初めてかもしれない。

ニカと黒崎くんの恋を応援したいって心から思った。

ニカが悲しむのだけは絶対に嫌。
ニカの可愛い笑顔を守るためならなんでもしたいって思った。
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