毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「そういえば夏休み終わったらすぐ席替えするって言ってたよね?」

ニカが目をキラキラさせて言った。
その気持ち、すごく分かる。

教室での一番楽しみなイベントってたぶん席替えだから。

「言ってた言ってた。ニカの隣がいいなー」

「女子同士が隣ってなかなかないけどね」

「あ、そうだ。ごめん!黒崎くんの隣がいいよね!」

「もー!」

どんなに憂鬱でもダルくても、
無情に二学期が始まった。
ニカと話した通り、始業式早々、席替えがあった。

かっちゃんはこころちゃんと離れてしまうから、ちょっと残念そうだった。

くじ引きの結果。

ちょっと腑に落ちないっていうか、気まずいっていうか。

ニカと黒崎くんは、見事に隣同士!
こころちゃんとゆうれいが一緒で、
私の隣はかっちゃんになった。

こんなの…一学期なら心の中でお祭り騒ぎをして大喜びしてるのに。

なんでよりにもよって今なんだろう。

「結芽の隣って久しぶりだな?」

「えっ…うん。中学以来だよね」

「教科書見せてな?」

「かっちゃん忘れ物しないじゃん」

「結芽の隣で気ぃゆるんでしちゃうかも」

「なにそれ」

気がゆるむって喜んでいいのかどうか分かんないし。
っていうか、今更喜ぶかどうか悩んでること自体おかしいし…!

教室のドア側、後ろのほうから視線を感じておそるおそる振り返る。

やっぱり。
ゆうれいが目を細めてこっちをジッと見ている。
なんなら口までとがらせてるし。

こころちゃんのことも気になったけれど、
こころちゃんはこっちを見ていなかった。

廊下の何が気になるのか、ずっとそっちのほうを見ていた。
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