毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ニカー!やったじゃん!」

「ね、びっくりした」

「黒崎くんも喜んでた?」

「知らないーっ。てかそのニヤけ顔やめてよね!あんたこそどーなのよ」

「どうって?」

「風と隣になっちゃって」

「あー…別になんとも?むしろいい訓練かも」

「俺は絶対ヤだけどね」

「うわっびっくりした!」

席替えが終わったらそのまま下校するだけだった。
ニカと廊下で喋っていたら後ろから急にゆうれいがやって来て、私もニカもお化け屋敷くらいびっくりしてしまった。

「れーい!やめてよね。あんた本当に“ゆうれい”みたいじゃん」

「もう俺なんて幽霊も同然だろ…存在しないのと同じなんだ…」

「なに、ゆうれい。なに言ってんの?」

「俺の願掛けは全然届きません…」

「あーあー、はいはい。そゆこと」

「どゆこと?」

「結芽ってばほんっと鈍感。ねぇ?玲くーん」

「ニカちゃん俺、心折れそう」

「可哀想に…」

「ちょっとやめてよ、人を悪人みたいに。もしかして私の隣になれなかったからとかそんなこと?ニカ信じちゃだめだからね?からかいたくて冗談言ってんだから!」

「は?ちょー本気だけど?」

私とニカの間に割り込んで、ゆうれいにネクタイを引っ張られて、体がぶつかった。

周りにいた女子達から小さく声が上がって、
もう本当にやめて欲しい…。

「ちょっと何すんのよ!」

「怜、この子全然だめじゃん。がんばんなね?」

「ニカっ!どこ行くの!」

「どこって帰るんだよ。黒崎待たせてるから。バイバーイ」

「えーっ!」
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