毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「かっちゃん」

ウィスパーボイスで囁くように呼んだら、眉毛をピクって動かして、「なに?」って表情をした。

「気になる?」って、ノートに走り書きをして見せた。

かっちゃんもシャーペンでサラサラって書いて見せてくれる。

「怜達、意外と仲良いなって」

「ヤキモチ?」

「ばーか」

ちょっとだけ笑って見せたら、かっちゃんも目を細めた。

黒板に向き直って、先生が書いた文字をノートに書き写そうとしたけれど、
ほんの少しのかっちゃんとのやり取りをジッと眺めてしまう。

消せなかった。
もしかしたらノートの提出があるかもしれないのに。

かっちゃんのノートを盗み見たら、端っこのほうにまだ私とのやり取りが残っている。

消さないで。

そう願うくらい、許されないかな。
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